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   やがて正面の石段の上に国宝の仁王門が見えてきます。本堂の蔵王堂が山上に向かって南へ向いているのに対し、この門は北向き。修験道の峯入り(山へ入って行を行うこと)には、熊野から吉野へ向かう順(じゅん)峯(ぶ)と吉野から熊野へ向かう逆峯(ぎゃくぶ)があり、仁王門は逆峯を迎えているのです。順峯を迎えていた二天門は今、跡地を示す石碑が本堂正面の庭に残っているだけです。
延元3年(1338)頃に再建された仁王門には両脇に阿形、吽形の木造仁王立像が安置され、その表情は修行へ向かう人を叱咤激励するかのように厳しい眼差しです。金峯山寺蔵王堂門を入り、石段を上ると右側に堂々と蔵王堂が聳えています。東大寺大仏殿に次ぐ巨大な木造建築は修験道の根本道場として、吉野のシンボルとして吉野山の中心に建っているのです。重層入母屋造り、桧皮葺、高さ34m、四方36mの建物は威容と優雅、重厚と軽快が不思議に調和しているように見えます。現在の建物は天正14年(1586)の大火災の後、天正20年頃に完成したと伝えられています。安土桃山時代を代表する壮麗な建物は圧倒的な迫力ですが、桜の花の中に見ると、匂い立つように華やかです。内陣には巨大な厨子を据え、秘仏の蔵王権現が三体安置されています。喜蔵院今年7月1日から来年6月30日までの一年間は、世界遺産登録を記念して扉が開かれています。この機会にぜひ蔵王権現との対面を実現させてみては如何でしょう。堂の中には檜、欅、神代杉などの大柱が林立していますが、中には躑躅や梨の巨木もあって、目を惹きます。太さも種類も違うし、歪んだままの木をそのまま使っているのですが、いかにも修験道の本堂らしく感じられます。蔵王堂に着くと、堂内で勤行を行いますが、例年になく3体の巨大な本尊蔵王権現が姿を現して、一層心が引き締まるようです。境内の威徳天満宮でも勤行を行うのですが、奥駈の総責任者である役を“大宿”と呼びますが、その大宿さんが要所、要所で場のいわれなどを含めた法話をしてくださいます。勝手神社を経て最初の宿である喜蔵院へ到着すると到着の報告、安全祈願など30分を超す長いお経が唱えられ、ようやくほっと一息。ここでの食事が俗界での最後。さまざまな思いを胸に眠りにつきます。
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大峯奥駈道を行く 「第2回 第一の関門 発心門〜橋の渡しから二蔵宿まで〜」
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