北にあたる吉野山から山上ヶ岳、弥山、八経ヶ岳、釈迦ヶ岳、地蔵岳、大黒岳など1500m級の山々が連なる大峰山脈全体をさして“大峯山”。山名を見ても分かるようにここは仏教と深くかかわる信仰と祈りの山なのです。大峯奥駈修行はこの大峰山脈の尾根約170kmを歩きながら、さまざまな修行を重ねていきます。修験者にとって山は神仏そのもの。山を登り、谷を渡り、体力の限りを尽くしてなおも歩くのは、あらゆるものに感謝と祈りを捧げるため。自分の限界を超えた聖なるものの存在に気づき、自分自身と出会うのだともいわれます。この奥駈修行は今から約1300年前、役小角(役行者)によって始められ、以来連綿として命をかけた厳しい修行が受け継がれています。この貴重な歴史文化を包み込んだ豊かな自然遺産が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されることになりました。清流に体を浸して穢れを払い、山中をひたすら歩き、岩を登り、崖から身を乗り出して極限の恐怖を体験。「擬死再生」と言われる修行では、罪をぬぐって生まれ変わるのです。日々の暮らしから遠くなってしまった自然がここでは主役。「サーンゲ、サンゲ(懺悔)、六根清浄」の掛け声は心の底から自然に出てくるとか。六根とは眼、鼻、舌、耳、身、意のことで全ての感覚のことです。この六根を山の濃密な気韻の中で清める修行が奥駈修行の目的です。道としての世界遺産はフランスからスペインへ至る「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」に次いで2番目のこと。
平成8年からほぼ毎年奥駈道を修験者と一緒に歩きながら写真をとり続ける松井良浩カメラマンの作品と共に、同行者ならではのエピソードを紹介してまいります。
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大峯奥駈道を行く 「第1回 序章〜大峯」
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